ブリッスルコーンパインは、地球上で最も長寿の非クローン個体として知られ、樹齢5,000年を超える木も存在する。
この樹木はカリフォルニア州ホワイト山地やネバダ、ユタの高地に自生し、氷期以降の約1万1,000年にわたり極端な気候変動を耐え抜いてきた。研究者たちはUSDA森林局の許可を得てホワイト山地の個体から針葉と種子の組織を採取し、ジョンズ・ホプキンス大学がゲノム解析を実施した。
その結果、2万1,364のタンパク質コード遺伝子が確認され、他の針葉樹より長いテロメアや病気耐性に関わる遺伝子が含まれていることが判明した。テロメアが長いことは細胞寿命が長く老化が遅いことを示唆し、ブリッスルコーンパインが老化の兆候をほとんど示さない理由の一端と考えられる。また、巨大なゲノムの大半は反復配列の「ジャンクDNA」で占められているが、進化の長い歴史を通じて保持されており、生存に悪影響はないとされる。
プロジェクトを率いたUCデービス校植物科学名誉教授ののデイビッド・ニール氏は、ゲノム解読は生物理解のための「部品表」を得るようなものであり、1本の木の解析だけで長寿の遺伝的基盤が完全に解明されるわけではないとしつつも、参照ゲノムが存在すること自体が現代生物学に不可欠な基盤になると述べている。
ブリッスルコーンパインは絶滅危惧種ではないものの、近年は極端な高温や干ばつ、樹皮を食害する甲虫によって一部の個体が死んでいる。しかし過去の気候極端期を何千年も生き延びてきた事実は、この種が高い環境耐性を持つことを示している。ゲノム情報は、将来の環境変化に適応するための遺伝的素材の特定や、他の生物の長寿研究に応用される可能性がある。老化の兆候がほとんど見られず、死因の多くが外的要因であることから、理論上は非常に長く生き続ける可能性も議論されているが、他種に応用できるかどうかは今後の研究に委ねられている。
Unlocking longevity insights from ancient bristlecone pine
出典:Phys.org
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用語解説
【非クローン個体】
非クローン個体とは、親のコピーではなく毎回違う遺伝子を持つ唯一の個体として生まれる生命のこと。人間の兄弟を例にすると、同じ親から生まれても顔や体質が少しずつ違うのは、父母の遺伝子が混ざり合い、毎回異なる組み合わせになるためで、これが非クローン個体である。一方、クローン個体とは、親とまったく同じ遺伝子を持つ「コピー」として増える生命を指す。ジャガイモを芋で増やす方法や、イチゴのランナー、バナナやリンゴの接ぎ木などは、遺伝的に同一の個体が複製される典型例である。つまり、非クローン個体=遺伝的に唯一の存在、クローン個体=遺伝的コピーという違いがある。
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