ホーム長寿研究チマネ族の脳はなぜ老化しないのか──脳萎縮70%減の秘密

チマネ族の脳はなぜ老化しないのか──脳萎縮70%減の秘密

チマネ族に関する一連の研究は、近代的生活様式が人間の脳と心臓に与える影響を再考させる重要な知見を提供している。

ボリビア・アマゾンに暮らすチマネ族は、医療へのアクセスがほとんどないにもかかわらず、加齢に伴う脳萎縮が西洋人より著しく少なく、その減少速度は約70%も遅いことが示された。研究者たちは40〜94歳の746名を対象にCTスキャンを行い、脳容量と年齢の関連を解析したうえで、米国とヨーロッパの工業化社会のデータと比較した。その結果、チマネ族は中年期から老年期にかけての脳容量の差が極めて小さく、脳萎縮に伴う認知症リスクが低い可能性が示唆された。

興味深いのは、チマネ族が高い全身性炎症を示す点である。通常、西洋人では炎症は脳萎縮と関連し、認知症の危険因子となる。しかしチマネ族の場合、炎症の主因は呼吸器・消化器・寄生虫感染であり、肥満や代謝異常に起因する慢性炎症とは性質が異なる。研究者たちは、チマネ族の極めて低い心血管リスクが、感染症由来の炎症の悪影響を上回り、脳の健康を保っている可能性を指摘している。この点は、認知症の原因が単純に炎症だけでは説明できないことを示し、心血管の健康が脳老化に強く影響するという新たな視点を提供する。

チマネ族は狩猟・採集・漁労・農耕を中心とした前近代的な生活を送り、飽和脂肪の少ない高食物繊維の食事を摂り、日常的に高い身体活動を行っている。2017年に Lancet が発表した研究では、彼らが科学的に知られる集団の中で最も冠動脈アテローム性動脈硬化の有病率が低いことが示されており、心血管疾患の危険因子もほとんど存在しない。こうした心血管の強さが、脳萎縮の抑制にも寄与していると考えられる。

研究者たちは、チマネ族の生活様式が近代的ライフスタイルの健康影響を検証する自然実験として機能していると述べ、炎症レベルが高い集団であっても、心血管の健康を保つことで脳の老化を大幅に遅らせられる可能性を強調している。チマネ族は、健康的な脳老化の基準点として科学的に極めて重要な存在となっている。

Amazon Indigenous People May Hold a Key to Slowing Down Aging

出典:SciTechDaily

https://scitechdaily.com/amazon-indigenous-people-may-hold-a-key-to-slowing-down-aging

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用語解説

【チマネ族】

チマネ族は、ボリビアのアマゾン地域に暮らす南米先住民族で、狩猟・採集・漁労・農耕を組み合わせた自給的な生活を続けている。人口は約1万6000人とされ、外部社会との接触が比較的少なく、伝統的な生活様式や言語を保っている。住居は川沿いの小規模な集落に点在し、家族単位の協力が生活の中心となる。加工食品や近代的インフラへの依存がほとんどなく、自然環境と密接に結びついた暮らしを営む民族である。

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