ホーム美容医療ボトックスは本当に安全か──長期使用がもたらす筋肉・神経・心理への影響

ボトックスは本当に安全か──長期使用がもたらす筋肉・神経・心理への影響

ボトックスは、ボツリヌス菌が産生する強力な神経毒素を利用した美容医療として広く普及している。毒素は神経から筋肉への信号を遮断し、筋肉を一時的に麻痺させることでしわを目立たなくする。しかし、その安全性については依然として議論が続いている。

2020年の研究では、美容目的での深刻な副作用はまれであり、2002〜03年にFDAへ報告された深刻な症例は36件にとどまったとされる。多くは嚥下困難に関するもので、治療目的(片頭痛、首のけいれん、多汗症、過活動膀胱、斜視など)での使用の方が美容目的よりも深刻な副作用のリスクが高いことも示されている。

ただし、副作用が十分に報告されていない可能性もある。2023年の調査では、回答者の約7割が痛みや不安、頭痛などの長期的な影響を経験したと述べており、施術がうまくいかなかった場合には心理的な負担が大きいことも示されている。まぶたの下垂が半年続く例もあり、日常生活や仕事に影響を及ぼすことがある。

長期的な健康影響については、臨床試験が短期間の追跡にとどまるため、十分な知見が得られていない。いくつかの研究では、長期間の使用によって顔の筋肉が使われなくなり、筋力が低下して表情が乏しくなる可能性が指摘されている。2022年のレビューでは、定期的にボトックスを受けた人の筋肉構造や機能が、最後の注射から数年後まで変化していたことが報告された。毒素が神経終末から細胞体へ輸送される様子も観察されているが、研究で用いられた濃度は実際の施術より高く、人間で中枢神経系に影響が及ぶ可能性は低いとされる。

心理面への影響も注目されている。2023年の研究では、ボトックス注射後に感情処理に関わる脳領域の活動が変化していた。人は他者の表情を無意識に模倣することで感情を理解するが、ボトックスによる筋肉麻痺はこの過程を妨げ、他者の感情認識を難しくする可能性がある。ただし、表情をしかめられないことがうつ病の改善に役立つ可能性も示されている。

安全性を確保するためには、免許を持つ医療従事者から施術を受けることが重要である。ボトックス製造元のアラガン・エステティックスは、偽造品の調査や厳格な製造管理を行っていると述べている。英国では美容注射の多くが非医師によって行われているという調査結果もあり、適切な施術者を選ぶことが求められる。正しく投与されれば安全性は高く、これまでの膨大な使用実績を踏まえても深刻な副作用は限定的だとされている。

現代の長寿社会とも言える環境では、美への追求を止めない人々が増えていく。ボトックスは美容医療の中で重要な位置を占め、利用者は非常に多い。だからこそ、きちんとした訓練を受けた施術者から施術を受けることが大事だと言える。

Are there long-term health risks to using Botox?

出典:BBC

https://www.bbc.com/future/article/20240503-are-there-long-terms-health-risks-to-using-botox

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用語解説

【ボトックス】

ボトックスは、1970年代にアメリカの眼科医アラン・スコットが、斜視治療のためにボツリヌス毒素を極めて薄く希釈して医療利用したことが始まりとされる。もともとは食中毒を引き起こす危険な神経毒だったが、適切に精製すれば筋肉の過剰な収縮を抑える治療薬になることが判明した。その後、1980年代に医療用途として承認され、1990年代に美容領域へ応用され、額や眉間のしわ改善に使われるようになった。現在では世界的に最も普及した美容医療の一つとなっている。

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