ホーム長寿研究加齢で蓄積するCMLを大幅除去──画期的酵素が示した若返りの可能性

加齢で蓄積するCMLを大幅除去──画期的酵素が示した若返りの可能性

老化した細胞には「CML」と呼ばれるタンパク質の損傷が蓄積する。これはAGEs(終末糖化産物・終末脂質酸化産物)という有害物質群の一種で、皮膚や血管、眼のような寿命の長いタンパク質に溜まり、組織を硬くし、慢性炎症を引き起こす原因になる。CMLは不可逆的と考えられてきたため、これまでの対策は新たな損傷を防ぐことに限られ、すでに蓄積したCMLを取り除く方法は存在しなかった。

そこで、Revel Pharmaceuticalsの研究チームは、Calicoやコロラド大学と協力し、CMLを除去できる酵素を「指向性進化」という手法で人工的に作り出すことに挑戦した。微生物由来の酵素を出発点にし、5回の改良を重ね、5億以上の変異体を調べて最も性能の高い酵素を選び出した。この酵素は「CMLase」と名付けられた。

CMLaseを人工的に損傷させたタンパク質に作用させると、CMLを半分以上除去し、一晩作用させるとほぼ完全に近い97%を取り除いた。さらに、64歳のヒト眼組織では45%、高齢者の動脈では70%以上、皮膚組織では55%のCMLが減少した。老化した組織は構造が複雑で酵素が働きにくい環境だが、CMLaseはその中でも高い性能を示した。

今回の研究は、すぐに人へ応用できる治療ではなく、あくまで概念実証段階である。生体内で安全に働くか、炎症の改善や組織の柔軟性向上につながるかなど、今後の検証が必要だ。

しかし、これまで不可能とされてきたCMLの「修復」に道を開いた点で大きな前進といえる。将来的には、同様の手法で他の老化関連損傷を修復する酵素が作られる可能性もある。もし安全性と効果が確認されれば、皮膚や血管、眼などの老化した組織を修復する新しい再生医療につながるかもしれない。

Engineered enzyme erases a stubborn mark of aging by up to 70% in human tissue samples

出典:Phys.org

https://phys.org/news/2026-07-enzyme-erases-stubborn-aging-human.html

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用語解説

【CML】

CML(Nε-カルボキシメチルリシン)とは、タンパク質のリシン残基が糖化や酸化によって変質した結果生じる AGEs(終末糖化産物) の一種。皮膚・血管・眼など寿命の長いタンパク質に蓄積しやすく、組織を硬くして老化を進める原因になる。さらに、RAGEという受容体を刺激して慢性炎症を引き起こし、動脈硬化や糖尿病などのリスクを高める。

【AGEs】

AGEs(Advanced Glycation End Products、終末糖化産物)とは、糖や脂質がタンパク質と結びついてできる老化促進物質の総称。体内で長期間蓄積すると、タンパク質が硬くなり、血管・皮膚・眼などの組織の機能低下を招く。さらに炎症を引き起こし、動脈硬化や糖尿病などの慢性疾患のリスクを高めることが知られている。調理時の褐変反応(メイラード反応)でも生成されるが、生体内では老化の重要な指標とされる。

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