加齢に伴い神経細胞の核膜にあるLINC複合体の発現が大きく低下し、これが脳老化を引き起こす主要因であることを、島根大学らの研究チームがマウスで明らかにした。
LINC複合体の構成分子Sun1やNesprin1は老齢マウスで著しく減少し、その結果として核構造が乱れ、クロマチンの高次構造が広範に変化し、神経活動に関わる遺伝子群の発現が大きく変動することが確認された。
特に、活動電位を生み出す軸索起始部(AIS)のナトリウムチャネルやカリウムチャネルの発現が変化し、AIS自体も短縮していた。
これらの変化により神経細胞の興奮性が低下し、老齢マウスでは不安行動の増加や記憶力低下といった脳機能の変容が生じていた。
一方、AAVベクターを用いてSun1を老齢マウスの神経細胞に補充すると、核構造異常やクロマチン動態の乱れが抑制され、遺伝子発現も若齢に近い状態へ部分的に回復した。AISの構造変化やイオンチャネル発現の異常も改善し、神経興奮性は若齢レベルに近づいた。
さらに、不安情動や記憶力低下といった加齢による脳機能変容も大きく抑えられた。
これらの結果は、LINC複合体の機能低下が核構造の乱れを起点に神経活動低下へ連鎖し、脳老化を駆動する新たな分子機構であることを示す。
Sun1補充が脳老化の抑止に有効である可能性も示され、予防医学的観点から重要な知見となる研究成果である。
出典:早稲田大学



