加熱式たばこが細胞老化に与える影響を、燃焼式たばこと比較して分子レベルで検証した研究が発表された。
東京都健康長寿医療センター研究所と東洋大学の研究チームは、ヒト肺線維芽細胞を用いて加熱式たばこエアロゾルの影響を解析し、従来の紙巻きたばこ煙とは異なる老化関連遺伝子の発現変化を引き起こすことを明らかにした。
まず、加熱式たばこエアロゾルは燃焼式たばこ煙に比べて細胞毒性が低いことが確認された。しかし、高濃度かつ反復曝露を行うと、CDKN2A、IL1B、MMP1 など細胞老化に関与する遺伝子の発現が上昇し、そのパターンは複製老化モデルや薬剤誘導老化モデルで見られる変化と類似していた。
また、遺伝子発現の一部は燃焼式たばこと共通していたが、両者で異なる変化も存在し、加熱式たばこ特有の影響が示唆された。これらの結果から、加熱式たばこは急性毒性こそ低いものの、繰り返し曝露により細胞老化を促す分子変化を引き起こす可能性があると考えられる。
細胞老化はCOPD、肺線維症、がんなど多くの呼吸器疾患の発症に関与するため、本研究は加熱式たばこの健康リスクを評価する上で重要な基礎データとなる。
加熱式たばこは世界的に普及が進む一方、その長期的影響は未解明であり、本研究は燃焼式たばことのリスク比較や公衆衛生政策の議論に向けた重要な知見を提供するものとなった。
今後は、実際の使用状況に近い条件での研究や、疾患発症との関連を検証するさらなる研究が求められる。
用語解説
【エアロゾル】
エアロゾルとは、液体や固体の微細な粒子が空気中に浮遊している状態を指す。霧、煙、スプレーの粒子などが典型例で、目に見えないほど小さな粒子が空気中を漂うことで形成される。加熱式たばこでは、たばこ葉を燃やさず加熱することで、この微粒子を含むエアロゾルが発生し、利用者はそれを吸入する。粒子の大きさや成分は健康影響に直結するため、医学・環境科学の分野で重要な概念となっている。
「加熱式たばこは燃焼式たばこよりも毒性は低いが細胞老化を誘発する可能性」
出典:東京都健康長寿医療センター
https://www.tmghig.jp/research/release/cms_upload/プレス概要_21.pdf



