老化研究は近年大きく進展し、老化を「治療や予防が可能な病態」とみなす考えが広がっている。
WHOは2019年のICD‑11で「老化関連」の拡張コードを導入し、老化を疾病分類に組み込んだ。背景には、老化の仕組みが徐々に解明され、介入可能性が示されてきたことがある。
転機となったのは1993年、線虫で特定遺伝子の変異により寿命が2倍に延びた研究で、以後、寿命関連遺伝子の探索が進み、エネルギー代謝やインスリン様シグナルに関わる遺伝子が寿命に影響することが判明した。
これらを操作する薬剤としてメトホルミンやラパマイシンの臨床研究も進む。
また1930年代から知られるカロリー制限の効果は、アカゲザルの実験で中高年期からでも寿命延長につながることが示され、ヒトでの試験も行われている。
現在、老化を対象とした臨床研究は700件近くに及ぶが、科学的に効果が確立しているのは運動のみで、薬剤やサプリ、幹細胞治療はまだ試験段階にある。
老化には統一した診断基準がなく、治療評価や対象選定のための基準作りが今後の課題である。
老化の主要因として、分裂不能となった「老化細胞」の蓄積が挙げられる。老化細胞は炎症物質を分泌し、体内の機能を妨げる。細胞が分裂できなくなるのは、紫外線や活性酸素などで染色体に傷が蓄積し、修復機能が追いつかなくなるためで、傷ついた細胞は老化細胞やがん細胞となるだけでなく、さまざまな疾患の原因にもなる。こうした細胞の増加と老化細胞の蓄積が、加齢に伴う病気や全身的な老化を引き起こすと考えられている。
まだ課題の多い領域であることは確かだが、老化に関する認識は世界規模で変化してきている。
用語解説
【ICD】
世界中の病気や死因を共通のコードで分類する国際基準。WHOが作成するICD(国際疾病分類)は、病気や死因を統一ルールでコード化する世界標準の分類体系で、医療統計、診療記録、保険請求などに使われる。国や地域を超えてデータを比較できるようにするための「医療の共通言語」であり、最新版はICD‑11で2022年に発効した。
健康寿命を延ばす治療法 動物実験だけでなく、ヒトでも臨床研究が進む
出典:朝日新聞



