高齢者を対象とした研究で、集中的な認知トレーニングが脳内のアセチルコリン量を増加させるという初めての有力な証拠が示された。
65歳以上の92人を10週間追跡し、1日30分のBrainHQによる高度な脳トレを行ったグループでは、注意や記憶に関わる前帯状皮質でアセチルコリンが2.3%増加した。これは加齢により10年で約2.5%減少することを考えると、約10年分の“巻き戻し”に相当する変化である。
一方、ソリティアやキャンディクラッシュなどのゲームを行ったグループでは変化が見られなかった。
増加は海馬など他の領域にも及び、学習・記憶・注意を調整するアセチルコリンの特性を踏まえると、わずかな上昇でも高齢者の認知機能に大きな影響を与えうると専門家は指摘する。
アセチルコリンは中年期から緩やかに減少し、アルツハイマー病では急激に低下するため、その維持は認知機能の保護に重要である。初期のアルツハイマー治療薬がアセチルコリンを増やすことで症状を軽減したことを踏まえると、今回の結果は脳トレが薬剤と同様の効果をもたらし、認知低下を遅らせる可能性を示す。
研究者らは、オンライン脳トレの効果が議論されてきた中で、脳内化学物質の変化という“脳そのものの変化”を示した点に意義があると強調している。
用語解説
【アセチルコリン】
アセチルコリンは、神経細胞同士が情報をやり取りする際に使われる代表的な神経伝達物質で、中枢神経と末梢神経の両方で働く。脳では注意の切り替え、学習、記憶形成などの認知機能を調整し、身体では筋肉を動かす指令を伝える役割を担う。自律神経の調節にも関わり、心拍や消化などの働きを整える。神経系の幅広い領域で重要な働きを持つ物質である。
Mental exercise can reverse a brain change linked to aging, study finds
出典:NPR



