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妊娠は細胞を老化させ、産後は若返らせる──揺れ動く生物学的年齢の正体

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妊娠が生物学的年齢に与える影響を調べた一連の研究は、妊娠が身体に極めて大きなストレスを与え、細胞レベルで老化を加速させる可能性を示している。

ハーバード医科大学のヴァディム・グラディシェフ率いる研究チームは、妊娠中の血液サンプルを解析し、DNAメチル化などのエピジェネティック修飾が通常より速く進むことを確認した。これは、生物学的年齢が実年齢より1〜2年高く見える状態であり、妊娠が細胞に強い負荷を与えていることを示唆する。妊娠後期には病気のリスクが高まり、細胞ストレスがピークに達するため、この結果は理にかなっているとされる。

しかし、イェール医科大学の周産期研究者キアラン・オドネルらが妊娠中および産後の119人から採取した血液を分析したところ、出産後3か月で状況が劇的に反転していた。

妊娠で一時的に老化が進んだにもかかわらず、産後には妊娠初期より3〜8年「若い」状態に見えるという結果が得られた。完全母乳育児を行った人ではこの傾向が強く、妊娠前の体重が高い人では弱まる傾向があった。ただし、この変化が本当の意味で細胞が若返る現象なのか、あるいは単にエピジェネティック指標が一時的に変動しているだけなのかはまだ明確ではない。生物学的年齢の低下が将来の健康や寿命にどのような影響を与えるのかも不明である。

エピジェネティック時計は有用なツールだが、生活習慣や環境の影響を強く受けるため、健康状態を完全に示す指標ではない。オドネルは今後、より大規模で多様な集団を対象に研究を行い、人種差別などによる慢性的ストレスが妊娠中の生物学的老化にどのような影響を与えるのかを明らかにしたいと考えている。また、細胞レベルの早期老化が将来の健康リスクを高めるかどうかを解明することは、妊娠前後の健康管理に重要な意味を持つ。

米国では妊産婦死亡率が特に黒人やネイティブアメリカンで高く、深刻な格差が存在する。オドネルは、今回の研究結果を妊娠中の人々を責める材料として使うべきではなく、母乳育児や体重管理など特定の行動を強制するような解釈も避けるべきだと強調する。個人には経済的・社会的事情があり、行動を選べない場合も多いからだ。重要なのは個人に責任を押しつけることではなく、妊産婦の健康研究への資金拡充など構造的・政策的な改革を進めることである。最終的な目標は、妊娠前・妊娠中・産後のすべての段階で親を支援し、次世代の健康と幸福を向上させることだ。

Pregnancy may increase biological age by 2 years—though some people end up ‘younger’

出典:Science

https://www.science.org/content/article/pregnancy-may-increase-biological-age-2-years-though-some-people-end-younger

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用語解説

【米国の妊産婦死亡率】

米国の妊産婦死亡率は2024年に 17.9人/10万出生 と報告され、依然として他の高所得国の2〜4倍に達する深刻な状況が続いている。パンデミック期には33人まで急上昇したが、その後低下したものの、依然として改善は限定的である。特に黒人女性の死亡率は44.8人と白人女性の約3倍に達し、人種間の格差が顕著だ。主要な死因には心血管疾患、慢性高血圧、感染、出血などがあり、CDCは80%以上が予防可能と指摘している。

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