順天堂大学大学院医学研究科神経学の斉木臣二准教授、服部信孝教授、老人性疾患病態・治療研究センターの吉川有紀子特任助教らの研究グループは、パーキンソン病患者の血中ポリアミンとその代謝産物7種を解析し、これらが早期診断や重症度評価に有用なバイオマーカーとなることを明らかにした。
特にジアセチルスペルミジンは患者の重症度と強く相関し、MRIで確認される脳の軸索障害とも関連していた。
また、パーキンソン病患者ではスペルミジンが増加しているにもかかわらず、その下流で抗加齢作用を持つスペルミンへの転換が年齢に関係なく一貫して低下していた。健常者では加齢とともにスペルミン/スペルミジン比が低下するが、患者では若年期からすでに低値であり、加齢が最大のリスク因子とされるパーキンソン病において、抗老化物質であるスペルミンの不足が病態に関与している可能性が示唆された。
スペルミンはオートファジーを最も強く誘導するポリアミンであり、細胞の老化抑制や神経保護に重要とされるため、その低下は神経変性の進行と密接に結びつくと考えられる。
さらに、ポリアミン7種の濃度組み合わせにより高精度でパーキンソン病を診断できることも示され、前臨床期の発症予測にも応用可能とされた。
本研究は、加齢に伴うオートファジー低下とパーキンソン病発症を結びつける初の分子レベルの証拠を提示した点で重要であり、今後はスペルミンの体内調節機構の解明を通じて、新たな治療法開発が期待される。
用語解説
【パーキンソン病】
パーキンソン病は、脳の黒質にあるドパミン神経細胞が減少することで、震え、筋肉のこわばり、動作の遅れなどの運動症状が進行する神経変性疾患。最大のリスクは加齢で、高齢化に伴い患者数は世界的に増加している。進行はゆっくりだが生活機能に影響し、早期診断と治療が重要とされる。
血中老化関連物質ポリアミンがパーキンソン病患者で変化することを発見―オートファジーを介する抗加齢効果と病態との関連を示唆―
出典:日本医療研究開発機構
