東京大学の研究グループは、柑橘類の果皮に多く含まれる「ポリメトキシフラボノイド(PMF)」という成分が、老化の進行を抑える働きで知られる酵素「SIRT1」を活性化することを明らかにした。
SIRT1は「長寿遺伝子」とも呼ばれ、細胞の代謝やストレス耐性、老化に関わる重要な酵素である。
研究チームは、これまでの測定法では植物成分の蛍光によって誤った結果が出る可能性がある点に着目し、蛍光を使わずに酵素反応を直接測定できる質量分析法を新たに構築した。
この方法を使い、日本で手に入る28種類の柑橘果皮を調べたところ、カラマンダリン、シークヮーサー、デコポンの果皮に特に強いSIRT1活性化作用があることが分かった。
さらに分析を進めると、HMF、ノビレチン、タンゲレチンなど5種類のPMFが活性の中心であり、とくにHMFが最も強い作用を示した。HMFは酵素そのものを無理に加速するのではなく、SIRT1が働きやすい形に変えることで反応を助ける「アロステリック活性化」という仕組みで作用していることも判明した。これは、HMFが酵素の別の部位に結合し、基質をつかみやすくすることで酵素の効率を高めるというものだ。
また、コンピューター解析から、PMFはSIRT1の特定の疎水性領域に結合する可能性が示され、メトキシ基の数や配置が活性の強さを左右することも示唆された。
今回の成果は、これまで十分に研究されてこなかった柑橘果皮の成分が、老化関連酵素にどのように作用するかを明確に示した点で重要であり、食品加工で大量に捨てられる果皮を健康素材として活用できる可能性を広げるものとなった。
ただし、この研究は試験管内での酵素反応を調べた段階であり、柑橘果皮を食べればすぐに老化が防げるという意味ではない。今後は、体内での吸収や安全性、実際の効果をさらに検証する必要がある。
用語解説
【SIRT1】
SIRT1 は、いわゆる「長寿遺伝子(サーチュイン)」の代表で、細胞の老化や代謝をコントロールする重要な酵素。NAD⁺を使ってタンパク質の“アセチル化”というスイッチを外し、細胞の修復、ストレス耐性、炎症抑制、エネルギー代謝の調整などを行う。加齢とともに働きが弱まるため、SIRT1を活性化する成分は老化研究や健康食品の分野で注目されている。
柑橘類の果皮に、老化予防や代謝に関わる酵素SIRT1を活性化する成分を発見
出典:東京大学
