イーロン・マスクが老化逆転は「非常に解決可能」と語ったことを受け、ハーバード大学のデビッド・シンクレアは、老化は「比較的単純な理由で起こり、可逆的である」と強く同意した。
シンクレアが共同創業した Life Biosciences は、老化逆転を狙う初のヒト臨床試験について FDA 承認を得ており、ER-100 と呼ばれる治療法で緑内障患者の視力回復に挑む。
これは「リプログラミング」と呼ばれる若返り技術で、細胞のエピジェネティック情報を部分的にリセットし、細胞をより若い状態へ戻すことを狙う。
山中因子に基づく技術だが、腫瘍形成などの危険性があるため、Life は OSK という3因子をウイルスで眼に注入し、抗生物質ドキシサイクリンでオン・オフを制御する方式を採用した。動物実験では安全性が確認されたが、人間での使用は初めてで免疫反応の懸念もある。
Life は過去に停滞したが、2021年以降はこの技術に集中し、脳など他臓器への応用や将来的な全身若返りの可能性も視野に入れている。ただし現段階では概念実証にすぎず、若返り薬が処方される段階には程遠い。
他社はより安全な因子探索を進めており、Life の手法は最適ではないとの見方もあるが、ヒト試験に最も近い存在として注目されている。
どのような結果を得られるか、このヒト臨床試験の推移を引き続き注視していきたい。
用語解説
【山中因子】
山中因子とは、細胞を初期胚のような多能性幹細胞(iPS細胞)へ巻き戻す力を持つ4つの遺伝子の総称で、2006年に山中伸弥教授が発見した。具体的には Oct4、Sox2、Klf4、c-Myc の4因子で、細胞のエピジェネティック状態を大きくリセットする“工場出荷状態ボタン”のような働きをする。強力だが腫瘍化リスクもあり、近年は一部だけを使う「部分的リプログラミング」が研究されている。
The first human test of a rejuvenation method will begin “shortly”
出典:MIT Technology Review
