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延びる寿命、縮む健康──シンガポールと世界で拡大するモービディティギャップ

Merlion statue spouting water in singapore at night

近年、シンガポールは世界でも突出した長寿国として注目されている。平均寿命と健康寿命の両方で世界トップに立つ一方、その裏では「健康に生きられない期間」が確実に増えていることが最新の国際分析で明らかになった。

ワシントン大学のIHME(Institute for Health Metrics and Evaluation)と、シンガポール国立大学医学部(NUS Medicine)が共同で実施した世界分析によれば、1990年から2023年まで、204の国と地域を対象に総寿命と健康寿命の差であるモービディティギャップ(疾病負荷ギャップ)を調査した結果、このギャップは203か国で拡大し、世界の平均寿命が64.6歳から73.8歳へ伸びたのに対し、健康寿命は55.9歳から63.1歳にとどまり、不健康な期間は8.8年から10.7年へ増加した。これは、病気や障害が人生の終末期に圧縮されるとする「疾病圧縮」仮説に反し、致死性ではない健康の損失が成人期を通じて蓄積していることを示している。

シンガポールでも同様に寿命の伸びが健康寿命の伸びを上回り、追加された年数の一部が病気や障害を抱えて過ごす期間となっている。男女差も顕著で、女性は男性より長寿である一方、不健康な期間も長く、2023年には女性12.1年、男性9.3年という「ジェンダー・ヘルス・パラドックス」が確認された。

世界全体では、腰痛などの筋骨格系疾患、うつ病や不安症などの精神疾患、加齢性難聴、転倒、その他の非感染性疾患がモービディティギャップの57.4%を占めた。主要なリスク因子は高い空腹時血糖、高BMI、栄養不良、喫煙、大気汚染であり、シンガポールでは高血糖、高BMI、職業上のリスク、高血圧、食事リスクが中心となった。

研究者らは、寿命を延ばすだけでは公衆衛生の進歩とは言えず、慢性疾患や障害、機能低下を減らし、延びた寿命を「健康に生きられる年数」へと転換することが次の課題だと指摘する。健康寿命とモービディティギャップの継続的な追跡は、政策が人々の生活の質を実際に改善しているかを評価する重要な指標となり、シンガポールは「長く生きる」だけでなく「長く健康に生きる」分野でも新たな基準を示す可能性を持つと結論づけられている。

Singapore Has the World’s Longest, Healthiest Lives – but It Comes With a Hidden Cost

出典:SciTechDaily

https://scitechdaily.com/singapore-has-the-worlds-longest-healthiest-lives-but-it-comes-with-a-hidden-cost

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用語解説

【モービディティギャップ】

モービディティギャップ(morbidity gap)とは、平均寿命から健康寿命を引いた「不健康な状態で過ごす期間」のこと。
具体的には、病気や障害を抱え、日常生活の質が低下したまま生きる年数を示す指標であり、寿命が延びても健康寿命が追いつかなければこのギャップは広がる。近年は多くの国で拡大しており、長寿化が必ずしも「健康に長く生きる」ことを意味しない現実を示す重要な概念とされる。

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