コウモリは体の大きさに対して異常な長寿を示し、がんを含む多くの病気を発症しないという特性から、長寿研究における重要な手がかりを秘めていると考えられている。
フアン・マヌエル・バスケスはシカゴ大学でこの疑問に魅了され、UCバークレーでのポスドク研究員時代に米国西部を巡って多数のコウモリ種から組織サンプルを採取し、特に寿命の差が極端なミユビナガコウモリ属のゲノム解析を進めた。最新研究では八種のゲノム解析が行われ、寿命の長い種ほどがん防御に関わる免疫遺伝子の発現が高いことが示され、長寿と免疫機能が密接に結びついていることが明らかになった。加齢関連遺伝子と病気防御遺伝子の重なりも大きく、老化と免疫の研究が互いを説明し得る可能性が示唆された。
さらに、バスケスが培養したコウモリ細胞を毒性化学物質に曝露した実験では、最長寿のヒメアブラコウモリがDNA修復ではなく細胞死を促進する遺伝子を活性化させるという予想外の反応を示した。これは、損傷細胞を無理に修復するより速やかに排除する戦略であり、ゾウにも共通するがん抵抗性の仕組みと一致する。こうした多様な防御戦略の理解は、長寿の仕組みを解明する上で重要な示唆を与える。
コウモリは激しい飛行活動を毎晩繰り返すため、極めて高い免疫活性を進化させており、慢性的なウイルス感染と共存しながら炎症を抑える能力を持つ。この高い免疫力は多様なウイルスを宿す能力につながり、COVID-19関連ウイルスのように人間へスピルオーバー(種を越えて感染)する危険性も生む。ゲノム解析では、長寿遺伝子とウイルス相互作用遺伝子の重なりが偶然とは思えないほど大きく、特にミユビナガコウモリ属はDNAウイルスと相互作用するタンパク質を生成する遺伝子が異常に多いことが判明した。人間や霊長類がRNAウイルス関連遺伝子を多く持つのとは対照的で、この進化的ミスマッチがコウモリ由来ウイルスが人間に深刻な感染症を引き起こす理由の一端を説明し得る。
現在、バスケスはペンシルベニア州立大学で長寿の遺伝的制御を研究し、老化と寿命の遺伝学を研究するバークレー校統合生物学准教授ピーター・スドマントは免疫応答の調節機構やDNA修復遺伝子と寿命の関係を霊長類細胞で調査している。
コウモリの特異な進化は、人間の健康課題に対する新たな解決策を示す可能性を持ち、自然が既に解決してきた仕組みを理解することで、老化やがんへの新しいアプローチが見えてくると研究者たちは期待している。
The secret to longer life may be hidden in bat DNA
出典:ScienceDaily
https://www.sciencedaily.com/releases/2026/09/260911003852.htm
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用語解説
【ウイルス相互作用遺伝子】
ウイルス相互作用遺伝子とは、ウイルスが細胞に侵入したり増殖したりする際に関わるタンパク質を作り出す遺伝子の総称。
これらの遺伝子が作るタンパク質は、ウイルスの感染を助ける場合もあれば、逆にウイルスを阻止して宿主を守る働きをする場合もある。コウモリでは特にDNAウイルスと結びつく遺伝子が多く、インターフェロン産生を促すなど強力な免疫反応を引き起こすことが知られている。こうした遺伝子の種類や働きの違いが、種ごとの免疫特性や長寿の差につながると考えられている。
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