スタンフォード大学医学部の研究で、老化に関わるタンパク質15-PGDHを阻害する治療が、高齢マウスの失われた膝軟骨を再生し、関節損傷後の関節炎発症を防ぐことが示された。人間の膝置換手術で採取された軟骨でも、同じ治療により新しい関節軟骨が生成され始め、加齢や変形性関節症で損傷した軟骨が将来、注射や経口薬で修復できる可能性が示唆された。
15-PGDH は加齢とともに増える「ジェロザイム」と呼ばれるタンパク質群の一つで、プロスタグランジンE2を分解し、組織機能の低下に関与する。阻害すると筋肉・骨・神経など多くの組織が再生しやすくなることが過去の研究で示されていた。
研究チームが若齢と高齢マウスの軟骨を比較すると、15-PGDH は加齢で約2倍に増加していた。阻害剤を全身または膝に投与すると、薄くなった軟骨が再び厚くなり、再生した組織は健康な関節に必要な硝子軟骨であった。ACL(前十字靭帯)損傷モデルでも、治療を受けたマウスは関節炎の発症率が大幅に低下し、歩行も改善した。治療は軟骨細胞の遺伝子発現を若返らせ、炎症や軟骨分解に関わる細胞群を減らし、硝子軟骨形成に関わる細胞群を22%から42%へ増加させた。
人間の軟骨でも同様の変化が確認され、分解系の遺伝子活動が低下し、新たな関節軟骨が生成され始めた。研究者は、幹細胞に依存せず既存の軟骨細胞を“若返らせる”という再生メカニズムが大きな臨床的可能性を持つと強調している。15-PGDH 阻害剤はすでに筋力低下を対象とした第1相試験で安全性が確認されており、軟骨再生を対象とした臨床試験の開始が期待されている。
用語解説
【硝子軟骨】
硝子軟骨(しょうしなんこつ)は、関節の表面を覆う最も重要な軟骨で、膝・股関節・肩などの動きを滑らかにする役割を持つ。表面はガラスのように滑らかで摩擦が非常に少なく、衝撃を吸収しながら骨同士が直接こすれないよう保護している。主成分はⅡ型コラーゲンと水分で、弾力と耐久性に優れるが、血管がないため自己修復能力が極めて低い。そのため加齢やケガで損傷すると変形性関節症の原因となりやすい。
Stanford scientists regrow lost cartilage and reverse arthritis in major breakthrough
出典:ScienceDaily
https://www.sciencedaily.com/releases/2026/06/260612021604.htm
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